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雑誌 ショパン 2016年 6月号 98ページ

3月4日/ティアラこうとう小ホール
Tiara Monthly Concert Vo1.l83タンゴの風
下川れいこ「タンゴの熱気を伝えるピアニスト」
江東区音楽家協会会員のピアニストである下川れいこが、ピアニストの岩崎淑氏を通して知り合ったというアコーディオン・バンドネオン奏者のジュゼッペ・シリアーノと、ヴァイオリンに齋藤寛子を迎えてタンゴの数々を聴かせた。下川は、イギリス、カナダで研鑽を積み、オーケストラとの共演をはじめ幅広いレパートリーを持ち、メディアにも出演しているとのこと。前半はバヤンとピアノの2重奏。ピアソラのバンドネオン協奏曲《アコンカグア》では勢いある第1楽章、憂愁漂う第2楽章、動的リズムで切り込むピアノの和音が印象的な第3楽章を通して2人の息はぴったり。一曲目でもあり演奏者と聴衆の温度差がやや感じられたが、次に演奏したブラッティの《エクスプレス組曲》において聴衆を大いに楽しませることに成功した。タンゴのような音楽では、どれだけ客席に熱気を伝え一体化出来るかが一つのポイントとなるだろう。第1曲は中央駅で行き交う人間模様が2人の線の絡みで表現、第2曲では海岸の心象風景を描き、第3曲では8分の7拍子のリズムで、暑い南の風を表した。後半はヴァイオリンも加わりバカロフ、ガルデル作品とピアソラの小品を演奏。高い技術力を持つバンドネオンと伸びやかなヴァイオリンも印象的。クラシック的な表現を持つ下川がタンゴを奏するにあたり、気負いすぎた感は否めなかったものの、意欲的な挑戦には拍手を送りたい。 (生田美子)

雑誌 ムジカノーヴァ 2016年 6月号 72ページ

関東の演奏会から 『タンゴの風』
イギリスとカナダで研鑽を積み、第8回カナダ・パシフィック・ピアノ・コンクールで第2位などの入賞歴を持つ下川れいこは、国内外の幅広い分野で活動中のピアニストである。一方、イタリア出身のジュゼッペ・シリアーノは、バヤン(ロシア独特のクロマティック・アコーディオン)とバンドネオンの名手として、国際的に高い評価を得ており、その名演は、ピアニスト・岩崎淑の主宰する「ミュージック・イン・スタイル」の第37回公演(2013年)で、私たちにも強烈な印象を刻みつけた。このときの演奏に感銘を受けた下川が、彼との共演を強く希望し、岩崎を介してそれが実現して、今回の「タンゴの風」開催の運びとなった。前半は、バヤンとピアノのデュオで、アストル・ピアソラ《バンドネオン協奏曲「アコンカグア」》と、エンリコ・ブラッティ《エクスプレス組曲》(デュオ版としては世界初演)が演奏された。そして、シリアーノが楽器をバンドネオンに持ち替えた後半の曲目は、ルイス・バカロフ《イル・ポスティーノ》、カルロス・ガルデル《ポル・ウナ・カベーサ》と、ピアソラの作品から《南へ帰ろう》《天使のミロンガ》《アディオス・ノニーノ》《タンティ・アンニ・プリマ~アヴェ・マリア》《ジャンヌ・イ・ポール》《ヴィオレンタンゴ》《チェ・タンゴ・チェ》である。
 シリアーノの弾くバヤンおよびバンドネオンは、指先の技巧が注目されるだけでなく、強弱のコントロールも絶妙で、ニュアンス豊かである。曲想にそった味わい深い風情、特に、むせび泣くような、哀愁に満ちた表現などには魅了される。彼の音楽性に強い影響を受けて、下川も存分に歌いあげ、リズムに乗ったピアノを聴かせた。なお、後半のはじめの2曲と、ピアソラ《天使のミロンガ》には、タンゴ楽団での演奏歴も豊富なヴァイオリニスト、齋藤寛子が加わった。後半で2人ないし3人が繰り広げた多彩な表現と情緒豊かな節回しは、前半同様に魅力的だった。(3月4日、ティアラこうとう小ホール) 原明美

雑誌音楽現代(2月のプレビュー) 2010年 2月号
ブルース・フォークトがピアノリサイタル

雑誌ショパン 2010年 2月号 54ページ
日本とカナダの架け橋に・・・・
ブルース・フォースト ピアノリサイタル開催

ムジカノーヴァ 2009年 4月号 91ページ
中務麗子ピアノ・リサイタル~シェークスピアの嵐と恋
(批評:壱岐邦雄)


中務麗子(イギリス王立音大、トリニティ音大、カナダのヴィクトリア大終了)が「シェークスピアの嵐と恋」と題して深堀絵梨(司会・朗読)と浅野廣太郎(バリトン・サックス)とコラボレーションのコンサート。彼女は教育活動(現ミュージックアカデミー東京講師)にも意欲的に取り組んでいるとあって客席には子供連れが多く、リサイタルというよりむしろファミリー・コンサートの雰囲気。
じっさいプログラムには「お客様による12音列の音選び」とそれに基づくユニット・シェーンベルガ-ズ(中務麗子と浅野廣太郎のコラボ)の即興演奏《12音の探訪》や、アンコール曲《ポケモン映画より「オラシオン」》といったものが含まれている。
中務麗子のソロは前半にバードの《パバーヌ》とベートーヴェン《ソナタ第17番「テンペスト」》、後半にプロコフィエフの《ピアノのための10の小品「ロメオとジュリエット」》。
ここにおいてもシェークスピア《テンペスト》の効果音入り朗読があったり、《ロメオとジュリエット》の情景ナレーションとサックスのインプロヴィゼーションが入ったりと、いかにもファミリー向けの感。もっとも中務麗子のピアノそのものはことさらシェークスピアの劇にこだわる風でなくマイルドな美音、強靭なダイナミクスをもってピアニスティックに響かせ真摯に奏でて、本格的な好演

音楽現代 2009年 4月号 145ページ
中務麗子ピアノ・リサイタル~ シェークスピアの嵐と恋
(批評:浅岡 弘和)


海外でのユニークな活動で知られる中務麗子がシェークスピアに因んだ作品を集めてリサイタルを開いた。 深堀絵梨の司会とトーク(台本:能見章子)により、前半はまずウィリアム・バード「パバーヌ」。中務はチェンバロも弾くだけあり自家薬籠中の演奏。次は中務と新ユニット、シェーンベルガーズを組むバリトンサックス奏者浅野廣太郎が「モンタギューとキャピュレット」を吹きながら登場。後半で披露する12音音列による即興のため、聴衆にSCHEに続く8音を選択させた。そして深堀による解説に続き、ベートーヴェン・ソナタ第17番ニ短調「テンペスト」がダイナミックに演奏された。
後半は「ロミオとジュリエット」。まず深堀がシェークスピアの序詞を朗読し、プロコフィエフのピアノ版10の商品から「情景」以降の9曲を演奏。もちろん「モンタギュー」では浅野が共演した。最後はユニット・シェーンベルガーズによる即興で、今時珍しい「12音の探訪」。(1月18日王子ホール)

雑誌[ショパン] 2009年 4月号 87ページ
舞台と客席が一体に 
中務麗子ピアノリサイタル
(批評:道下京子)


中務麗子は、英国王立音楽大学やトリニティー音楽大学などで研鑽を重ね、カナダのヴィクトリア大学で修士課程、そしてブリティッシュ・コロンビア大学の演奏ディプロマ課程を修めている。カナダパシフィックコンクール第2位などの受賞歴を持ち、現在は演奏活動とともに、ミュージックアカデミー東京で講師を務めている。
  当日は、司会には役者、ダンサーとして活躍する深堀絵梨、バリトン・サクスフォンは浅野廣太郎を迎えて、『シェークスピアの嵐と恋』と銘打ったリサイタルが行われた。ベーゼンドルファーの深くて円やか響きを活かしたウィリアム・バード『パバーヌ』、典雅な趣とともに、ゆったりとした歩みで時を重ねていった。ここで、後半の即興演奏のために、聴衆とともに12音列にならって音選びが行われた。その後、ベートーヴェンのソナタ『テンペスト』の演奏が続いた。静と動のコントラストを大胆にとり、メリハリのある音楽を形成した。第1楽章では、アルペッジョを含む第一主題を、あえて響きの混濁を残して、ミステリアスな雰囲気を醸し出していた。第2楽章では流麗さと音の一体感を際立たせて、大きなスケールで音楽を描き出した。休憩後、司会の深堀によって、シェークスピアの『ロメオとジュリエット』の詩が紹介され、中務によってプロコフィエフ『ロメオとジュリエット』作品75(10曲うち9曲)が演奏された。リズムを細やかに扱うことで、力強い躍動感をもたらしており、全体的にユーモアとロマンティクスを見事に融合させた。『モンタギューとキャピュレット家』では、サキソフォンの浅野の憂鬱な表情が演奏に素直に反映し、楽想作りに貢献していた。最後に、『即興12音の探訪』と題して、前半に聴衆によって選ばれた8つの音を、ピアノとサキソフォンのユニット(その名もユニット・シェーンベルガーズ)、がその場で即興演奏した。舞台と客席とが一体となった演奏会で、和やかな雰囲気の中、会は閉じられた。(1月18日王子ホール)

2004年 5月9日 京都 青山音楽記念館バロックザール 
ピアノとチェンバロのマチネ 中務麗子 リサイタル 
「音楽の友7月号」p.205 日下部吉彦


個性的で、自分の音楽を持っている。海外への留学や、かの地での演奏活動から培われた資質だろう。そのことは、とても貴重だが、ときによっては首をかしげさせることにもなる。モーツァルトのソナタK457は、かなり思い切ったもので、アダージョでのアゴーギグをたっぷりとるなど、ベートーベン風ともいえるほどに重い表現だった。ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」の前半は、とても美しかった。音色もきれいだし、歌心もたっぷり。ただし、後半のポロネーズは、テンポとリズムをもう少し厳格に取った方がいいのではないか。アルベニスの「スペインの歌」も好演だったが、欲をいえば、情熱の裏側にある陰影の部分がほしかった。冒頭で、ソレルのソナタをチェンバロで弾いたが、チェンバロ音楽としては、やや未消化か。(5月9日・青山音楽記念館バロックザール)

CD評:百瀬喬 雑誌『ムジカノーヴァ』 2003年3月号31ページ

中務麗子ピアノ・リサイタル「道化師たちの調べ」中務麗子は英国音楽院などに学んだ後に、カナダのヴィクトリア大学、ブリティッシュ・コロンビア大学で研鑚を重ね、昨年2月の第8回パシフィック・ピアノコンクールで第2位に輝いた若手女流。このアルバムは、2001年11月にトッパンホールで行われたリサイタルのライブ録音という。研ぎすまされた感性と、鮮やかなタッチのピアニズムの持ち主で、いずれの曲もよく彫琢されており、また表情も豊か。ラヴェルの「道化師の朝の歌」などはとても若手とは思えないほどに表情をよく捉えている。

雑誌ショパン2003年5月号 30ページ 新鋭ピアニスト ロナン・マギル氏推薦にて掲載

2002年ムジカノーヴァ 4月号 
ヤマハ音楽支援制度 音楽活動支援コンサート
中務麗子 ピアノリサイタル 道化師たちの調べ

*明快なピアニズム 
中務麗子は英国王立音楽大学、カナダのヴィクトリア大学などを経て現在はカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学音楽学部博士課程在籍中。
前半、ラヴェル<鏡>から3曲(「夜蛾」「洋上の小船」「道化師の朝の歌」)、シマノフスキ<仮面劇>。後半、ドビュッシー<前奏曲集>から3曲(「パックの踊り」「ミンストレル」「風変わりなラヴィ-ヌ将軍」)とリスト<ヴェネチアとナポリ>(「ゴンドラを漕ぐ女」「カンツォーネ」「タランテラ」)。
つまり、「道化」をキーとしてのプログラミングなのだが、演奏自体はもちろんいたって真摯。明快なピア二ズム。どの音、どんなシーンもくっきりと響かせ、描く。ラヴェルは高音が煌いて強靭。シマノフスキ<仮面劇>の「シェヘラザード」のエキゾティシズムは、モダ-ンな様相を強め、ラヴェルとの親近性を増して響く。ドビュッシーも和音、フレーズ、リズムとも明晰明快。リストでは骨太なフレージングでゆったりと「カンツォーネ」を歌い「タランテラ」では轟音をうならせる。このあたり、ベルマンを彷彿とさせたりして当夜一の快演であった。(11月23日、トッパンホール) 壱岐邦雄

Concert’s Reviewsショパン 2002年3月号 122ページ 演奏会評
多彩な道化師たち 中務麗子ピアノリサイタル 湯浅玲子

現在カナダで学ぶ中務麗子のリサイタルは、「道化師たちの調べ」と題打ったユニークなプログラム。この柔軟な発想からは彼女の音楽に対する視野の広さが伺える。同じ<道化師>でも、それぞれの作品の中での描かれ方は、明確に異なっている。彼女はそこに登場する道化師たちを、単なる滑稽で風刺的なキャラクター付けに留めず、悲哀や狂気といった感情にも目を向けた。
前半の曲目、ラヴェル「鏡」より「道化師の朝の歌」を含む3曲と、シマノフスフキ「仮面劇」は、メリハリのある熱演であったが、フォルテシモやアクセントがやや攻撃的で、拍子が切迫する箇所もあった。表面的なテクニックにとらわれないしなやかな音の伸びと、作品の持つ精神世界を充分加味してほしい。その一方で、後半のドビュッシーとリストは余裕があり、彼女の自由闊達な表現が楽しめた。ゆっくりとしたテンポで演奏されたドビュッシー「前奏曲集」よりは、わざとらしいおどけ方が印象的。リスト「ヴェネチアとナポリ」は丁寧な描写ではあるが、装飾音にさらに自然なカンタービレ欲しいところ。最後の「タランテラ」は粒のそろった見事な出来栄えだった。
興味深いプログラムではあったが、彼女らしさを生かすには前半のウエイトがかなり重たかったのではないだろうか。曲順に一考の余地があるだろう。 (11月23日 トッパンホール)

2002年1月 ymf YAMAHA MUSIC FOUNDATION NO.24 「ymf」第24号 p.11
ヤマハ音楽支援制度 2001年度対象者  中務麗子さんがピアノリサイタルと開催

本誌19号で授与式の模様を紹介した「ヤマハ音楽支援制度・音楽活動支援」の対象者・中務麗子さんが、昨年11月23日に東京・トッパンホールでピアノリサイタルを行った。
英国王立大学で音楽学士号(B.Mus)修得後、ギルドホール音楽演劇学校大学院伴奏科を卒業し、現在カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学音楽学部の博士課程(DMA)に在籍中の中務さんは、ワットフォード音楽祭でモーツアルトのピアノ協奏曲第17番を演奏し、コンチェルト部門1位を受賞するなど、国内外で独奏者及び室内楽奏者として意欲的な活動を続けている。今回の「道化師たちの調べ」と題されたリサイタルでは、ラヴェルの「鏡」からの3曲を皮きりに、シマノフスキの「仮面劇」、ドビュッシーの「前奏曲集」より3曲、リストの「ヴェネチアとナポリ」というユニークなプログラムを披露。持ち前の表現力と音楽性で作曲家が独自の個性を刻み込んださまざまな道化師たちの姿を浮き彫りにし、「ヴェネチアとナポリ」の第3曲「タランテラ」では、その圧倒的なテクニックで満場の聴衆に深い感銘を与えた。

2001年11月23日 ヤマハ音楽活動支援対象 中務麗子ピアノリサイタル
「道化師たちの調べ」評

「音楽現代」2002年1月号(荻谷 由喜子)中務麗子は英国王立音楽大学卒業後、英国のふたつの大学院も卒業し、現在カナダ・ブリティッシュコロンビア大学博士課程に在籍中。今回は「道化師たちの調べ」をテーマに、ラヴェル、シマノフスキ、ドビュッシーの作品から道化師に因むピースとリスト「ヴェネチアとナポリ」の3曲が演奏された。笑いと涙をにじませた道化師の世界から一歩踏み込み、人間の苦悩や狂気にまでテーマを広げているのも興味深い。
前半はラヴェル「鏡」から、第1、第3、第4曲とシマノフフスキ「仮面劇」の3曲。最初の硬さは次第にほぐれ、シマノフスキでは人間の内面に独特な角度で切り込む作曲家の意図によく迫った。休憩後はドビュッシー「前奏曲集」より「パックの踊り」「ミンストレル」「風変わりなラヴィーヌ将軍」。やや、過剰な表現も聴かれたがキャラクターのひき分けは成功。リストはさまざまなタッチを自在に駆使した好演。ことに終曲「タランテラ」はリズムも崩れず最後まで面白く聴かせた。(11月23日トッパンホール)

2000年3月31日 イシハラホール評 音楽の友 2000年6月号 195ページ

ピアノの中務麗子は、弱音を基調としたユニークな表現でショパンのノクターン2曲、ラヴェルの「鏡」、シューマンの幻想曲を弾いた。いずれの曲においても、中務はただ堅実に弾こうとするのでなく、自分が感じたこと、楽譜から読み取ったことを自分のことばで表現しており、それが個性的な表現につながっている。ショパンやシューマンでの情熱的かつロマンティックな味わいや、ラベルでの表現の面白さ(技術的には少し甘さを残した)など、十分に魅力的であった。ただ繊細な弱音が使えるはずの人なのに、強音が少し過激になりすぎる傾向にあり、確かにダイナミクスの幅は広いのだが、その以降の音楽的なつながりに若干の疑問を残した。(3月31日・イシハラホール)福本健